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東京葛飾のコントラバス販売専門店『ベースランド』です!商品紹介や修理調整、工房日記など載せています。

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コントラバスという楽器について その2

こんにちは

コントラバス販売専門店ベースランドの下川です。

 

今回はコントラバスの各部の名称と役割について解説をしていきたいと思います。

 

【ペグ(糸巻)】

 

コントラバスの糸巻はマシンヘッドという歯車の仕様になっています。ペグマシンなどとも呼びます。

コントラバスは弦の張力がとても強く全弦合わせて150kgほどもあります。そのためバイオリンなどと同様の木製ペグよりも強度をもたせるために真鍮やメタルスチールで作製します。また弦長がとても長いためにチューニングの際に巻く量が多いので、このようなギアを組み込んでいます。

しかし、中には一部に木製のパーツを使用したギアもあります。

 

湿気や手の汗、油分などにより腐食やさびが発生します。

さび止めやさび落とし、潤滑油などをつける必要がある場合もあります。

 

マシンには一体型のプレートタイプというものと一つ一つが独立したセパレートタイプがあります。

プレートタイプは二つのペグが合わさっているため、1つに不具合が起こると片面すべて交換となります。その点でセパレートタイプは調整がしやすいです。

見た目などもありますので、よく相談されてから決められるとよいと思います。

 

【ナット】

 

ペグで巻かれた弦が指板の上に伸びていく部分で弦の幅を決め、指板に付かないように高さを決めているパーツがナットです。

通常は強度や耐摩耗性を考慮して黒檀などの硬い木で作製されます。

製作者によって指板やネックの幅は人それぞれであるため、それに対して適正な弦の幅があります。

また演奏者の弦の押さえ方や手の大きさ、指の太さによってこの間隔を調整します。

弦の高さもある程度調整することができ、低すぎると弦が指板に近くなるため、弦の振動部分が指板表面に接触してしまい雑音の原因となります。

逆に高すぎると弦の張力が強すぎるためにポジションを押さえるのに力が必要となり、音がきれいに発音しなかったりして演奏性を損なうこととなります。

 

また、チューニングの際には弦が擦れあうことで摩耗しますので、鉛筆の黒鉛を擦りつけたり、ロウをつけたりして滑りをよくする工夫をするとよいです。

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【指板】

 

コントラバスの指板は通常、黒檀で作られます。中には硬めの木を削って黒く染色し表面をラッカーや漆系塗料でコートしたものも存在します。

演奏した際の良しあしについては仕上がりに左右されますのでどちらが良いということもありませんが、指板表面が弦の擦れによって削れた場合に雑音がでるのを防ぐために指板表面を削るという調整を行います。

染色指板は黒檀に対して変形を起こしやすく、それが原因で削れていなくても調整をする必要が出てくることがあります。またその作業の際に染色指板ですとコート材が刃物を傷めるために削りにくく、またそのあとに再度指板を染色する必要があるために料金がたかくなってしまう傾向があります。

 

ネックおよび指板は本体に対してある程度の角度がつけられています。

これによって弦に角度をつけてテンションを高め、発音をよくすることができます。

また、比例して駒も高くなりますので、演奏の際に表板に弦が接触するのを防ぐためでもあります。

 

写真はバイオリンのもので、ネックの経時変化を説明したものですが、参考に載せています。

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【駒(ブリッジ)】

 

駒はメープルという楓の仲間の木材を使って製作されます。

駒には弦の振動を表板に伝える役割があります。弓で弦を擦ると表板に対して横方向に弦が振動します。その振動が駒を伝っていく際に縦方向へと変換され表板が振動します。駒が特殊な形状に加工されているのはこのためです。

弦の張力がとても強いという話をしましたが、それならば駒はもっと硬い材料の方がいいのではと思われることもあると思いますが、例えば黒檀などで作った場合、硬質な物体の内部には振動が伝わりやすく、伝わる速度も速いために弦の振動に含まれる雑な音成分もすべて表板に伝えてしまうために音量は大きくなりますが音が安定せず汚い音色となってしまいます。

メープルには適度に振動を吸収する硬さがあります。

 

駒の弦溝は経年で摩耗し深くなります。弦の振動を抑えてしまい響きがわるくなりますので、定期的に削って調整する必要があります。

 

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また駒にアジャスターと呼ばれる高さを調節するためのネジを取り付けることがあります。

夏場などに湿度や気温が高くなると、表板は膨張し、アーチが膨らみます。それによって駒は押し上げられて弦は指板に対して高くなります。その結果演奏がしづらくなります。

削って調整もできますが、また冬場には逆の現象が起こるためこのようなパーツを取り付けて自身で調節できるようにします。

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【テールピース(緒留め)】

 

テールピースとは楽器の底の部分にあるエンドピンというパーツに取り付けて駒からひぱってきた弦を取り付け張るためのパーツです。

材質には黒檀やローズウッド、ツゲ、チタンなどの金属製のものもあります。

楽器ごとに振動の特性が違うため、それにあった材質を選択する必要があります。楽器が鼻にかかったような音でもう少し音に開きや欲しい場合には硬質なものが合います。逆に音が明るすぎると感じる場合にはツゲがあうでしょう。

 

またテールピースをエンドピンに引っ掛けるために弦が付いている方とは逆方向にテールコードと呼ばれるひもを取り付けます。この紐にはスチール、チタン、タングステンやガット(腸)、ナイロン、化学繊維などさまざまなものが存在します。

 

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【魂柱(サウンドポスト)】

 

魂柱とは楽器内部に立っている木製の棒でスプルースという松の仲間の木でできています。

弦のテンションによって表板にかかる圧力を支え、裏板へ表板の振動を伝える役割があります。

この位置や角度、内側への圧力によって発音が変わってきますので、長く楽器を使っていて、極端に悪くなってきた場合などに調整して改善することが出来ます。

しかし、楽器を組み立てる際には魂柱、駒、弦という順番に取り付けていきます。(厳密には弦と駒を立てるタイミングは一緒ですが)つまり魂柱をベースに駒を調整していますので、音がわるくなったからといって安易に魂柱だけをたたいたり、削ったりすることはおすすめできません。

まずは弦の種類や劣化具合やテールピースの位置、駒の位置や形状を調整してから改善がない場合に魂柱を調整すべきと考えます。また魂柱を調整した際には必ず駒なども見直すべきと考えます。

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【弦】

 

弦にはガット弦という腸をつかった単線のものもありますが、現在流通している弦はほぼ芯線に巻き線を巻いた構造のものです。

芯線にはさまざまな種類があり、構造や材質もさまざまです。金属や合成繊維のものがあります。ロープ構造といって金属線を編み込んであるものがあります。

また巻線にもクロムスチールやタングステン、ナイロンのものなどさまざまなものがあります。

また巻き線は丸形状のものと平たい線を巻いたものがあります。

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つぎはコントラバスの歴史について書きたいと思います。

ありがとうございました。