この記事ではコントラバスの”簡易”ネック折れ修理についてお話します。
コントラバスにものをぶつけてしまったり、誤って倒してしまいネックにヒビが入ったり折れたりすることはあると思います。大型の楽器であるため修理にはどうしても費用がかかってしまうが予算がそこまでかけられず困っているという方向けの修理となります。
まずご注意いただきたいのは”簡易”とあるようにもっとも綺麗で丁寧、そして強度のある修理方法としてネック部分をそっくり入れ替える”継ぎネック”と呼ばれる技法があり、今回紹介するのはその代替方法として安価で簡易に修理を行う方法という点です。
それではあくまで数ある方法のうちの一例ですが、実際の作業工程などについてみていきましょう🌝
記事内でネックのペグ側から順番に顎、棹、首などと呼んでいますが私自身が勝手に呼んでいるだけで業界用語などではないです(笑)🙏
ネック折れには3パターン存在する
ネックの顎が割れるケース
ネックとペグボックスをつないでいる部分がわれてしまうパターンです。
弦の張力によってだんだんと割れていくパターンやぶつけてしまうパターンなどが考えられます。
形状が複雑であるために修理がしずらい箇所でもあります。またペグマシーン(プレートタイプ)のパーツの下まで割れが続いている場合にはプレートを取り外す必要があるため少し手間がかかります🤑
ネックの棹が折れるケース
(画像はバイオリンのもの)
ネックの中ほどの部分が折れるということであるが、これはぶつけて折れることはそうそうないと考えてよい。エスカレータや電車のドアなど機械に挟んで大きな力がかかった場合を除いて)
材料自体の寿命や木の節、樹液ポケット部分で割れてしまうことが大半である。
ここを接着し、先述のスリットで修理したとしても強度的には不安が残る部分である。指板がついているために引きちぎれることはないが・・・
これは継ぎネックをした方が無難といえる🙄
ネックの首が折れるケース
(画像はチェロのもの)
おそらくこれが最も多くみられる割れ方である。ネック材は製作の都合上、年輪が指板と並行になるように作るためこの首の部分は前面がすべて木口となり年輪に沿って割れやすい性質を持っている。
それぞれのケースでの修理方法について
顎が割れた場合
<木棒(or木ネジ)を打ち込む方法>
最も簡単な方法は『木のピンを打ち込む方法』です。
割れた部分の隙間(赤線)にニカワ(接着剤)を流し込んで接着を行います。
簡易修理の一番の問題点はこの時に隙間に接着剤がうまく入っていかない場合があること、そしてなかに入った木くずやほこりなどのゴミを取り除くことができない点にあります。
ただ接着しただけだと強度が弱すぎるため、木棒もしくは木ネジを貫通するように打ち込みます。裏側には出ないように長さを調整します。
画像は木ネジを打ち込んだものです。
ネットを取り外してナットの下に1~2本、指板を外した下もしくは指版に穴をあけて(ネックのメープル材のところまで)打ち込みます。
その後穴は黒檀でふさぎます。
指板ごと打ち込んだ方が簡単ですが跡は残ります。
【木ネジを使用する場合】
メリット:ネジ自体の強度が強い
うまく打ち込めば隙間を引きつけて接着を強固にできる。
デメリット:木材に含まれる水分でネジが錆びる(腐食)ため、材料を吟味すること
下穴を考えて開けないとほとんど木材をつなぐ力がなくなる場合がある。
【木棒を使用する場合】
メリット:ニカワで接着でき、材料との馴染みがよい
摩擦によって木材同士を強固につなぐことができる。
デメリット:太さを合わせる必要がある。またあらかじめ穴の内部に少し接着剤をしみこませる必要があるため手間がかかる
※なおこの修理方法は一度きりとなり、今後隙間がはがれてきた場合にはやり直すことのできない方法である。(隙間の接着剤を除去できない。木棒や木ネジを除去できない場合がある等)
<スリットを入れて木のブロックでつなぐ方法>
まず接着を行う。ネックには平らな部分がないため、専用のあて型を木で作製し、プラスチック粘度などで型を取る。
上はノミを用いて手作業で彫った溝、下はルーターを使用したもの
接着面積はなるべく多くしたいので表側に出ないギリギリまで彫り込む。
溝にあうように木材ブロックを作製して接着する。この時に木材ブロックのサイドの接着面がこのつなぎの強度を決めるため、ぴったり合っていないと意味がない。
首が割れた場合
修理方法は顎の部分と同様に木棒もしくは木ネジを指板を取り外した下もしくは指版に穴をあけて打ち込むことである。
<木棒(or木ネジ)を打ち込む方法>
<新しい木材を足す方法>
他の方法として割れの少し上で切り落とし、新しい木材を足す方法もある。
ネックを外す必要があるため、この修理をおこなうのであれば継ぎネックを検討してもよいと思われる。
なお木棒を打ち込む際にその方向によってネックにかかる力に対しての抵抗が変わるため注意が必要です。
今後なるべくながく持たせるためにも注意が必要。
終わりに
これらはあくまでも簡易な方法ですので最良の方法ではなく、また今後絶対に問題がおこらないという保証はできません。
なるべくであれば継ぎネックなどのキチンとした修理をご検討ください。