みなさんこんにちわ
ベースランド代表の下川です🙋
この記事ではコントラバスの部位別に故障のパターンや時期、メンテナンスについてお話します。
楽器の作りや材料などによっても違いがあるため必ずこの通りではないことをご承知の上、読んでいただけますと幸いです。
【ネック】
ネック周りはそれほど頻繁にメンテナンスが必要なことはありません。何か故障があった場合にはそれを修理するといった具合で大丈夫です。🌝
ただ故障した場合に長期間放置するのは避けた方がよいでしょう!(どんどん症状が悪化していく可能性があるため)
●ペグマシン
真鍮やステンレスなどで作られるこのパーツは一見ものすごく丈夫そうです。
常に弦によって数十キロの張力にされされている歯車やネジは動かすことで少しずつすり減っていきます。
①ネジが緩んでいる場合
歯車を留めるネジが緩んでいる場合には締め直しが必要です。緩んだままだと歯車が波打ち、かみ合わせが悪くなることで歯が削れる原因となります。
自転車などのネジと同じで振動で緩みます。店舗で調整の際にチェックがなされます。
②ネジの回りが悪い場合
新品のペグマシンは作りがタイトであるためにかたい場合があります。故障ではないので根気よく使用して慣らしましょう。
古いパーツでは錆びによって固まることもあります。多少であれば機械オイル(管楽器ようのオイルやグリスが良い)で大丈夫です。錆が多い場合には錆び取りスプレー(KURE556など)も有効ですが、しっかりとふき取りましょう。※残すと新しい錆びやニスの変色などの原因となります。🤧
●ナット
弦が乗っている黒いパーツです。
雑音の原因の一つとなる弦溝の削れがあります。これは使用していれば避けられない現象です。
材料の質によってタイミングは異なりますがおよそ1~5年くらいで交換or調整が必要になります。
●指版
①ポジションの溝
演奏していると弦の振幅で指版の表面が削れていき、車の轍のような溝ができます。
この溝に弦が当たることで雑音となります。
こちらも材質によりますが3~10年ほどで表面を削る必要がでてきます。
②材料のゆがみ
これは質の悪い指板(繊維の詰まっていない安価材料や乾燥の足りない原材料)や染色(メープルなどを黒く染めたもの)の場合によくみられる現象です。
表面のカーブが狂うために削る必要があります。早ければ1~2年で傾向が見られます。※ほとんどゆがまない場合もあります🤔
【楽器本体】
楽器本体は材料が大きさに対して薄く、箱型の構造であるためにネックに比べると変化が大きく、故障の多い部位となります。
一年に一回のメンテナンスでしっかりと変化を観察することが大事です。また演奏者の皆様自身で日々チェックいただくことも大事です😌
●横板
横板は頑丈そうですが、2.5mmほどの厚みしかありません。
横板に沿って年輪が走っているために裂けやすい性質があります。木の収縮などによって力が加わると自然に割れることがありますので、冬や夏などの湿度や気温の変化が大きい季節への変わり目には注意して観察する必要があります。
またぶつけるなどして強い衝撃を与えた場合には念のために確認しましょう😬
●裏板
横板は最も丈夫です。摩耗や衝撃にも強いです。
①変形
表板に比べると変形はしにくいです。
②はがれ
横板との接着も強いためハガレも発生頻度が少ないですが、横板と同様に季節の変わり目に注意です。
③割れ
表板に比べると強度があるために割れにくいです。割れが発生したのちにその部分が乾燥・変形してしまうと柔軟性があまりない材料なだけに接着修理が難しくなります。
修理はお早めに!強度がある一方で修理の際には表板よりも大変になるということです🥺
●表板
表板はマツ科の針葉樹『スプルース』を使用しているために軽く、柔らかいです。
①へこみやすり減り
特に表面はへこみやすいためニスが塗ってあるとはいえぶつけたりするのには注意しまてください🙇
また横置きするときに引きずるようにするとフチが削れて行ってしまいます。
丁寧に置くように心がけていただくと楽器にも良いと思います。🤫
②変形
自然変形もしやすいのですが、駒や魂柱、バスバーなどによって上から下から圧力がかかっている表板は変形してアーチが崩れやすいです。
バスバーが短くなって位置が外側にずれたり、バスバーのハガレによる強度不足によっても変形するためメンテナンスをまめに行いましょう。半年から一年が目安です!
極端に湿度が変化する場所は好まれません。
コントラバスにはプレスによって熱変形させてアーチを作ったものもあります。そういった楽器の表板が変形するのは元に戻ろうとしているだけであるために防げません運命と思って諦めましょう😖
②はがれ
ハガレは起きやすい部分です。まめにセルフチェックを行ってください。
表板のフチの表をたたいた時にカスタネットのようなカンカンッという音が鳴ったらはがれています。
接着剤の膠(ニカワ)は天然の成分であるために経年で劣化します。自然にはがれることがありますので慌てずに修理しましょう。
③割れ
材料の厚みに対して年輪を直角にして削るために、縦に裂けて割れやすいです。(これは音の振動を伝えやすくするための工夫の結果です)
また駒などの圧力やF孔の存在によって裏板に比べて割れやすい箇所が多いのも仕方がありません。
割れは少しであっても広がっていく可能性があるため、早めに修理をしましょう。
割れが板の中央に寄っている場合は表板を開ける必要があります。
【パーツ】
●弦
弦は消耗品です。コントラバスの弦は金属製でその太さゆえに切れることがほとんどなく、何年も使用に耐えうることがあります😓
しかし弾きやすさや音質を考えると交換した方がよいのは皆さんお分かりだと思います。費用は掛かってしまいますが我慢して1~2年ほどで交換しましょう。
①表面がざらざらしてきた。ほつれてきた
ほつれは指を切ったり、雑音の原因となります。また表面のざらざらは錆びが出た証拠でもありますので早めのタイミングでの交換がよいでしょう。
②チューニングが合わなくなる
弦の劣化に伴い倍音の出方が変わってきます。フラジオレットで合わせたのに開放弦が狂っている。逆に開放弦をチューナーで合わせたのにという場合などもこれが原因の場合があります。
上達のためにも交換がよいでしょう。
③弦が固い
弦は張りたての頃に一番伸びます。その後ある程度落ち着いてくるのですが弾力を保ちながらも一二年かけて少しずつ伸びていきます。
伸びきってしまうと音の伸びもなくなって硬質な感じとなり弦のテンション自体も固く針金のようになっていきます。
指への負担があるので交換しましょう。
●駒
駒は交換が必要なパーツの一つです。
通常は何年も使用できるものですがメンテナンスを怠ると故障が発生します。弦によって100kgくらいの張力がかかっているために変形することはあります。
①曲がる場合(反り)
駒が前か後ろに反っていくことです。きちんと作られた駒であれば足はしっかりと設置してあるために足から上だけが曲がるようになります。
原因として考えられることの一つは弦によって引っ張られて駒全体が前傾していくことです。新しい弦はまめにチューニングを行うため、その都度前に引っ張られて前傾します。自身で戻すこともできますが不安であれば迷わずにプロに任せましょう。
これも年一回のチェック項目の一つです。
あるいは駒が薄く削られすぎていて単純な強度不足により縦に押しつぶされて曲がることがあります。工房ではその判断がなされる場合、交換対象となります。
②弦溝が削れる
弦の溝が削れて深くなり弦が埋もれると、駒自体が弦の振動を止めるミュート役割を果たしてしまうために鳴りが悪くなります。
基本的には削るだけで直せますが、高さが足りなくなる場合駒アジャスターの取付や交換の対象となります。
③変形
駒の材料自体が湿度や圧力で変形します。足の裏などを削って本体に合わせることで調整可能です。調整ができないくらい変形している場合には振動(音)の伝達も悪いので潔く交換しましょう😳
●テールピース
こちらは消耗品です。強度を考えると割れた場合に修理はできません。
交換となります。
●エンドピン
ソケット、シャフト、キャップはそれぞれ交換ができます。
ソケットの穴が数年かけて広がっていくことがありますのでその場合だけは修理が必要となります。
終わりに
楽器は定期的なメンテナンスが大事です。たとえ故障していなくても”一年に一回”は楽器店に持ち込み状態を確認しましょう!!
店舗でのメンテナンス(一年に一回)
●板の割れ
●板のハガレ
●ナット・駒の弦溝
●指板の反り
●魂柱の状態
●パーツの状態
セルフチェック(およそ月に一回)
●板の割れ
●板のハガレ
●雑音の有無